研究概要 |
1.低酸素刺激に対する心筋細胞応答の分子機構の解明: 我々はこれまで、ラットの培養心筋細胞に一定時間低酸素(Hypoxia)刺激(O_2濃度0.1%以下)および低酸素負荷後再酸素化(Reoxygenation)刺激を行うことにより虚血・再灌流のin vitroのモデルを作成し、Hypoxiaによって短時間のうちに心筋細胞からVEGFが放出され、それが心筋細胞上のVEGF receptorに作用することによって一連の細胞内情報伝達系のカスケードが活性化される、というオートクライン機構が存在することを明らかにしてきた。しかし、心筋細胞ではVEGF以外にも同fmilyに属するVEGF-BやVEGF-Cおよびそれらのreceptorが発現することが知られており、心筋細胞の低酸素刺激応答の分子機構の全容を解明するためには、これらを介するpath wayの関与を明らかにすることが必要である。そこで同様の実験系を用いて解析するため、新たにratのVEGF-BおよびVEGF-CのcDNA,recombinant protein,中和抗体等の作成が必要であり,今年度はVEGF-BとVEGF-Cの遺伝子cloningを開始した。現在、VEGF-Cのcloningを終え、recombinant VEGF-Cおよびその中和抗体の作成を進めている。また、VEGF-Bのcloningも開始した。 2.低酸素負荷後再酸素化刺激に反応して心筋細胞から放出される生理活性物質の単離・同定: 1.と同様の系を用いて培養心筋細胞に低酸素負荷後再酸素化刺激を行い、培養上清を採取して濃縮し正常酸素下で培養心筋細胞に負荷することにより、生理活性を検出するアッセイ系を確立した。そして、生理活性物質を含む培養上清を濃縮後、イオン交換、ゲル濾過、等電点等のカラムを用いて分画し、各分画の活性を測定することにより分子量1万以上のタンパクであることを確認した。現在、アミノ酸配列の決定が可能となる含有量を得るために大量に培養上清を採取しており、またaffinity chromatographyによる単離へ向けて抗体作成も進行中である。
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