研究概要 |
本研究の目的は、虚血・再灌流心筋における転写因子hypoxia-inducible factor 1α(HIF-1α)の発現並びに機能的意義を明らかにすることであった。本年度は主に、ニワトリHIF-1αの構造について検討を加え、さらに、ニワトリ胚組織におけるその発現パターンを解析した。 1)ニワトリ胚におけるHIF-1α cDNAのクローニングと発現解析:RT-PCR法およびRACE法を用いて10日目ニワトリ胚由来培養心室筋細胞(CEVM)より単離に成功したニワトリHIF-1α cDNAについて種々の解析を加えた。ニワトリHIF-1αのアミノ酸配列はヒトHIF-1αと高い相同性(約79%)を示しており、特に、basic helix-loop-helix(bHLH)ドメイン、Per/ARNT/Sim(PAS)ドメイン、3'転写活性化ドメインにおける相同性が高かった。中でも、PAS(B)ドメインの相同性は100%であり、この部位がHIF-1αの機能発現に本質的役割を果たしている可能性が示唆された。他方、ニワトリHIF-1αと他のbHLH-PAS蛋白であるニワトリendothelial PAS protein1(EPAS1)との間のアミノ酸配列の相同性は約49%と低く、これら二つの蛋白質が進化の早期に分岐したことを示唆している。HIF-1α mRNAの発現レベルに関しては、CEVM、ニワトリ胚心臓において高く、ニワトリ胚肝臓で低かった。それに対し、EPAS1 mRNAの発現レベルは、ニワトリ胚肝臓で高く、CEVM、ニワトリ胚心臓において低かった。以上より、HIF-1αが胎生期心血管系の発達に寄与している可能性が示唆された(Takahashi T,et al.Biochem Biophys Res Commun,2001,in press)。
|