研究概要 |
私達は日本人Charcot-Marie-Tooth(CMT)病1型関連疾患の156家系の遺伝子を解析し,17p11.2の遺伝子重複32家系,Peripheral Myelin Protein 22(PMP22)遺伝子変異3家系,Po蛋白遺伝子変異3家系,コネキシン32遺伝子変異11家系,17p11.2の遺伝子欠失6家系を検出した.日本人のCMT病患者では既知の遺伝子異常が検出されない症例が多く,新たな病因遺伝子の解明が必要である.最初に,原因不明のCMT病1型の候補遺伝子として,ミエリン形成に重要な役割を果たしているミエリン会合性糖蛋白に注目し,候補遺伝子として検討した.既知の病因遺伝子を検索し,遺伝子変異が検出されない10症例を対象として,ミエリン会合性糖蛋白遺伝子の全エクソンーイントロン移行部を含めPCRにて増幅し,塩基配列を決定した.しかし,特に遺伝子変異は検出されず,1型の病因遺伝子にはなり得ないものと思われた.CMT病では末梢神経における刺激伝達の障害が基本的病態であり,一方,ナトリウムチャンネルは電気的刺激の伝達、脱分極に関与しており,このチャンネルの異常により刺激伝達の障害が生ずる事は充分考えられる.新たな病因遺伝子の解明を目的として,末梢神経に発現している人膜電位依存性Naチャンネルαサブユニット遺伝子の分離を試み,人脊髄ファージライブラリーからSCN8AのcDNAを分離し,全長7008bpの塩基配列を決定した.アミノ酸配列ではラット、マウスと約99%相同性を,塩基配列では約90%の相同性を示した.Thr1066IleuとIle1637Thrの多型を検出した.RT-PCR法を用いて,脳・脊髄での発現を確認した.
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