研究概要 |
1)HO-1に対する単クローン抗体を用いた生検肝組織の免疫組織染色で患児肝にはHO-1が染色されなかった. 2)HO-1欠損患児と家族および正常対照者から末梢血単核球を分離し,B95-8培養上清を使用して,EBV芽球化細胞株(lymphoblastoid cell line,LCL)を作成した.これら,および以下の研究においては,細胞採取等はすべて患児の家族および正常対照者の同意のもとに実施した.患児末梢血細胞およびLCL細胞株を用いてウエスタンブロッティング法を実施したところ,HO-2蛋白は対照と同等に発現がみられたが,HO-1蛋白はヘミン,亜ヒ酸,カドミウムなどのストレス刺激後でも全く発現がみられなかった. 3)HO-1mRNAはRT-PCR法により,その発現が確認された.PCRプライマーの定量的最適条件を決定するためにシーケンスデテクションシステムを使用した. 4)患者LCL培養系にHO-1の基質であるヘミンを添加すると,患者細胞はヘミン濃度依存性に死滅した. 5)患児および両親のHO-1遺伝子解析から,母親ではエクソン2の欠損,父親ではエクソン3に2塩基欠損があることがわかり,患児はその重複へテロ接合体であることが知れた. 6)フローサイトメトリー法によるHO-1蛋白産生定量的評価:正常ヒト末梢血単核細胞をフローサイトメトリーで,単球,リンパ球に画分した.細胞刺激後,HO-1mRNA発現をRT-PCRで,HO-1蛋白発現をフローサイトメトリー法でみると,単球画分でHO-1発現が強く,リンパ球では逆に弱く,細胞系特異的なHO-1蛋白発現をフローサイトメトリー法でみると,単球画分でHO-1発現が強く,リンパ球では逆に弱く,細胞系特異的なHO-1発現調節機構の存在が示唆された. 7)正常HO-1遺伝子を含むレトロウイルスベクターの作成し,患児細胞株LCLへ遺伝子導入したところ,HO-1蛋白発現と機能の部分的正常化がみられた.
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