研究概要 |
DMDにおけるジストロフィン(dy)欠損が筋壊死に関わるメカニズム及びdyの生理作用は未だに不明である。我々はDMDで筋崩壊が起こるメカニズムには血管平滑筋の機能障害に伴う血流異常と血液凝固系の亢進が関与していると考えるに至っている。平成12年に報告したように、mdxマウスの血管平滑筋特異的にジストロフィンを発現させる(骨格筋には発現させない)ことを目的に、ヒト平滑筋aムアクチンプロモーター(EA4.7)にヒトのジストロフィンcDNA全長をつなぎ、次いでSV40のPolyA signalをつないだコンストラクト(EA4,7-dy-An)を構築した。次ここのコンストラクトが実際にdyを発現できるかをC2C12細胞(マイオブラスト)にリポフェクション法で導入し、in vitroでジストロフィン染色を行い、その発現を検討した。その後、作製したE4,7-dy-AnをC57BL/6のマウスの受精卵約800個にマイクロインジェクションし、仮親マウスの子宮にその卵を戻した。生まれたマウスのしっぽよりDNAを抽出後、プロモーターの一部をプローブに用いてサザングブロティングを施行し、E4,7-dy-Anが個体に導入されているかを確認した。また、同時にプロモーター領域とジストロフィン領域にプライマーを設定しPCR法でも確認をした。E4,7-dy-AnをC2C12細胞に導入した後、ジストロフィン染色をして、dyの発現を調べた結果、約20%の細胞がジストロフィン陽性であった。800個のマウスの受精卵にマイクロインジェクションし、仮親にその卵を戻した結果、41匹のマウスが生まれ7匹のトランスジェニックマウスを得ることができた。今年度はこの7匹をmdxマウスと交配して血管平滑筋にのみにdyが発現するmdxトランスジェニックマウスを得る事に成功した。現在このマウスを用いて筋崩壊の状況を検討している段階である。更にユートロフィン欠損マウスを用いてその全身の平滑筋にジストロフィンを導入し詳細な検討に入る計画である。
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