横紋筋肉腫の最終分化抑制の細胞内情報伝達機構の究明に関する研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11470174
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 京都府立医科大学
• 研究代表者: 澤田 淳 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (10079874)
• 研究分担者: 細井 創 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (20238744)
• キーワード: 横紋筋肉腫 (RMS) / MyoD / 細胞周期 / 筋最終分化 / ラプマイシン / eIF-4E / c-MYC / mTOR

研究概要

なぜRMSでは骨格筋分化制御遺伝子MyoDの発現にもかかわらずその機能、GO/G1細胞周期停止と筋最終分化の誘導が抑制され、病理学的診断が困難なぼど未分化なままなのか、をRMS細胞株および線維芽細胞株を用いて、IGF-IRシグナリングによるMyoDタンパクのリン酸化(posttranslational modification)によるMyoDの機能抑制(筋特異的蛋白遺伝子のE-boxへの結合の抑制)として証明できるか検討することを目的として以下の予備実験を行った。
ラパマイシン(RAP)の増殖抑制効果(IC50ならびに増殖曲線)の検討をおこない、RAPのG1細胞周期停止作用を確認した。RAPが翻訳開始因子elF-4E抑制蛋白PHAS-1のリン酸化を抑制することを確認した。またPHAS-1がリン酸化されることによりelF-4E結合能を失う(翻訳開始抑制の解除)ことをFar-Western Analysisで示した。elF-4Eによって翻訳の開始が制御されていると推測されている遺伝子のうち予備実験の結果を基に、c-MYCタンパクの発現が血清やIGF-1により誘導されること、またそれをRAPが抑制することをWestern Blotで示した。mTOR機能がPHAS-1のリン酸化、c-MYC誘導そしてG1-S細胞周期進行にresponsibleであることをmTORのRAP結合領域(FRB)にアミノ酸置換変異を導入し、結合不可としたRAP耐性のリコンビナント変異mTORを導入したRh30細胞株を用い証明した。

研究成果

• [文献書誌] Hosoi H: "Rapamycin causes poorly reversible inhibition of mTOR and induces p53-independent apoptosis in human rhabdomyosarcoma cells"Cancer Res. 59. 886-894 (1999)
• [文献書誌] Ioboshi Y,Hosoi H: "Amino acid-dependent control of p70*6k"J Biol Chem. 274. 1092-1099 (1999)
• [文献書誌] 細井創、澤田淳: "横紋筋肉腫の分子生物学的特性と臨床への応用"小児科臨床. 52. 1751-1760 (1999)
• [文献書誌] Sugimoto T,Hosoi H: "Malignant rhabdoid-tumor cells line showing neural and smooth-muscle-cell phenotypes"Int. J Cancer. 82. 678-686 (1999)
• [文献書誌] Misawa A.Hosoi H: "N-Myc induction stimulated by insulin-like growth factor I through mitogen-activated protein kinase signaling pathway"Cancer Res. 60. 64-69 (2000)
• [文献書誌] Dias P,Hosoi H: "Strong immunostaining for myogenin in rhabdomyosarcoma is significantly associated with tumors of alveolar subclass"Am J Pathol. 156. 399-408 (2000)
• [文献書誌] 細井創、澤田淳: "家族性腫瘍(宇都宮穣二監修、樋野興夫、湯浅保二、恒松由記子編)"中山書店、東京. 415 (1998)