研究概要 |
本研究において、ヒト横紋肉腫(rhabdomyosarcoma;RMS)細胞ではInsulin like Growth Factor I Receptor(IGF-IR)はその下流のmTOR(mammmalian target of rapamycin)pathwayを通じて,G1-S細胞周期進行に必要な増殖関連遺伝子産物の一つc-My c蛋白の発現を翻訳レベルで促進していること,ラパマイシンはそのシグナル伝達路を特異的に抑制し,c-Myc蛋白の発現を抑制してRMS細胞にG1 arrestを引き起こしていることを明らかにした。 その過程で、神経芽腫細胞では、IGF-IがMitogen Activated Protein Kinase(MAPK)pathwayを活性化してN-mycの発現をRNAレベルで誘導してG1細胞周期進行を促進していることを見出し報告した。 以上より、(1)増殖因子刺激によるmycなどの増殖関連遺伝子の発現には、転写制御だけでなく、翻訳レベルの制御のシグナル伝達路もあること、(2)増殖関連遺伝子の発現をもっぱら翻訳制御の細胞内情報伝達路に依存しているような異常細胞(例えば、RMSのような癌細胞)があること、(3)そのような偏った増殖機構をもつ異常細胞(癌)では、主要増殖シグナル伝達路を特異的にブロックするような薬剤(RMSではmTOR pathwayの特異的阻害剤RAPまたはその誘導体)が、新しいより合理的な「抗癌剤」となり得ることが示唆された。 また、RMS細胞増殖の主要細胞内情報伝達路であるIGF-IR/mTOR pathwayは、細胞生存(アポトーシスの抑制)にも機能していること明らかにし、今後、もう一つの機能である細胞分化の機構についても現在、研究を発展させ、継続検討中である。
|