研究概要 |
本研究は1型糖尿病の発症感受性遺伝子を遺伝学的に検証し、さらにその相互作用を明らかにすると共に、両親から児への伝搬の様式を明らかにするものである。その為に3年間で以下の検討を行った。 対象は小児期発症1型糖尿病児で急性発症1型糖尿病(A)、急性発症5歳未満(E),緩徐進行型(S)、正常対照(C)に分け、合わせて279例である。 1.HLA抗原遺伝子:HLA-DRβ、DQβ,DQα鎖遺伝子を解析した。DQA-DQB-DRBの遺伝子型ではE群で301-303-901(R. R.=7.29)が,A群では301-303-901(R.R.=3.79)、301-401-405(R.R.=2.82)、301-302-802(R.R.=4.57)が有意に高く、301-302-403、102-602-1501(R. R.=0.07)が有意に低かった。S群は正常対照群と差を認めなかった。 2.CTLA-4遺伝子多型:更にCTLA-4多型は、excm-Iの49番塩基多型(A/G)を制限酵素Bbv-1を用いたRFLPにて決定した。CTLA-4多型は対照群に比しIDDM(E)ではG/G多型が有意に高かった(P<0.05)。 3.HLAclass II抗原遺伝子とCTLA-4遺伝子多型:DRB1に0405又は0901を持ちCTLA-4遺伝子にG又はAを持つ場合、病気との関係をOdds ratio (OR)比較した。IDDM (E)においてDRB1-0901単独を有しCTLA-4(G+)のodds比は有意に上昇した。それぞれに依存して感受性を高めていると考えた。 4.NeuroD/BETA2遺伝子多型:他施設からの報告と異なり、我々は1型糖尿病群と正常対照群の間に有惷な差を認めなかった。 5.IDDMK1,2-22のENV蛋白N末端で見いだされた2つの多型と1型糖尿病の相関:HERV-K遺伝子を単離し、IDDHK1,2-22遺伝子を特異的に増幅し、ENV領域に610bpをクローニングしてその塩基配列を決定。(2)5'末端から339および510番目の塩基(nt)に各々(A/G)(A/G)のアミノ酸置換を伴った塩基置換を見いだした。この2つの多型の意義について検討した。最終的には糖尿病群と正常群の間に差は見られなかった。 6.1型糖尿病児のコントロールとQOL : HbAlc値と患児、保護者のQOLを検討した。HbAlcの改善は治療法に関係なくQOLを高めた。
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