研究概要 |
皮膚科領域の主要な疾患の病因を理解し根元的な治療戦略を構築するため、マウス胎児皮膚の形態形成過程で発現が変化することを指標に、皮膚構成細胞の増殖・分化の制御に関わる遺伝子を系統的に単離し、解析する。今年の研究成果の要約は以下のとおりである。 1.Hornerin : Hornerinは本研究で新規に単離したprofilaggrin類似遺伝子であり、その構造と発現の特徴を報告した(J.Biol.Chem.,276(50):47445-47452,2001)。免疫電顕を行ったところ、Hornerinはケラトヒアリン顆粒にprofilaggrinと共に存在し、抗Hornerin抗体の金コロイド粒子は顆粒の周辺部に多く見出された。またEF-hand領域の相同性を利用してヒトHornerinの候補遺伝子を同定し、解析中である。さらに、ichthiosis vulgarisのモデルと考えられているFlaky tail mouseではprofilaggrinの発現が低下しているとの報告があるので、その条件下でHornerinはどうなっているかを、共同研究で解析している。 2.Calmin : N-末にCHドメイン、C-末に膜貫通ドメインをもつ新規タンパク質で、表皮分化と共に発現が増加する(Genomics,74(2),172-179,2001)。今年度は中枢神経における発現を主に解析した。脳では、海馬、視床、小脳のプルキンエ細胞、上衣細胞に発現がみられ、転写物、タンパク質ともに、生後脳の成熟過程で増強していた。また、細胞内では胞体から樹状突起側にタンパク質が検出され、軸索側には検出されないという極性を示した。脳組織を分画すると、calminタンパク質はpostsynaptic density(PSD)に濃縮されていた。以上の結果は、calminがシナプス形成に何らかの役割を果たしていることを示唆する。 3.マウス胎児毛のう形成にsonic hedgehog(Shh)シグナル系が果たしている役割を探る目的で、guard hairの形成が遅れるTabbyマウス、器官培養系でEGF処理をして毛のう形成を特異的に阻害する系において、Shhとその受容体Patched, Patched-2の発現を解析した。その結果、毛のう形成が抑制されると、Shhとその受容体の発現が抑制されることが明らかになった(Arch.Dermatol.Res., 293(9)435-441, 2001)。
|