膵癌中の低酸素細胞分画と膵癌に対する一回大線量照射における低酸素細胞増感剤ドラニダゾールの有用性について、ヌードマウス可移植ヒト膵癌を用いて基礎的に検討した。SUIT-2、PANC-1、MLA PaCa-2、BxPC-3の4種類の膵癌細胞を、6週齢雄Balb/cヌードマウスの背部皮下に移植し、腫瘍が最大径約9-10mm(約0.2g)となったところで、実験を行った。坦癌マウスを4群に分け、第1群では直前にマウスを頚椎脱臼させて全腫瘍細胞を低酸素状態とした上で照射を行った。第2群の坦癌マウスには無麻酔、非固定の自然な状態で全身照射を行った。第3群に対してはドラニダゾール100mg/kg(in vitroの約0.4mMに相当)を、また第4群に対しては250mg/kg(約1mMに相当)を静脈内投与して20分後に、第2群と同様の状態で全身照射を行った。いずれの群も照射直後に腫瘍を摘出し、コラゲナーゼ/ディスパーゼ溶液中で1時間撹拌することによってsingle cellとし、in vivo-in vitroコロニー形成試験によって腫瘍細胞の生存率を求めた。 In vivoの4種類の膵癌の低酸素細胞分画は、SUIT-2 20%、PANC-1 14%、MLA PaCa-2 10%、BxPC-3 27%で、平均は18%であった。ドラニダゾールはいずれの腫瘍に対しても、増感効果を示したが、増感率は、100mg/kgにおいて1.15-1.3、250mg/kgにおいて1.35-1.45であった。これらの結果より、術中照射の際に低酸素細胞増感剤を使用することの妥当性が示唆された。また切除不能膵癌の術中照射にドラニダゾールを併用することは妥当と考えられた。しかし、期待しうる増感率は現在の投与量では1.2-1.3程度の可能性があるので、今後はさらに投与量の増加を考慮する必要があると考えられた
|