本研究は、アルカリ溶解法を用いたComet Assayによるヒト腫瘍内の低酸素細胞分画の測定を目的とする。まず、マウス実験腫瘍において、アルカリ溶解法を用いたComet Assayが低酸素細胞分画の検出に有用で、従来から行われてきた放射線生物学的方法(In vivo-In vitro clonogenic assay)により算出した低酸素分画ともよく相関することを明らかにした。さらに、臨床応用する場合、針生検による細胞採集が必要となるため、同方法により実験腫瘍から得られた細胞を用いて低酸素細胞分画を測定が可能であることを確認した。また、in vitroでは、酸素分圧と放射線照射後の細胞生存率およびComet AssayによるDNA障害の関連について検討を加え、酸素分圧の上昇にしたがってDNA障害が大きくなることを明らかにした。 次に、京都大学医学部の倫理委員会からの指針を得て、臨床症例での腫瘍内低酸素分画測定を行った。対象は子宮頸癌腔内照射例、膵癌術中照射例、骨軟部腫瘍術中照射例である。現在までに、子宮頸癌腔内照射1例と骨肉腫術中照射1例において測定を行った。骨肉腫症例では術中照射約15分後に腫瘍組織を採取、直ちにAssayを行った。Single strand breaksの程度をTail momentをパラメーターとして解析すると、低酸素細胞分画は約4%であった。今後は臨床症例での測定を続けつつ、放射線治療後の一次効果および予後との関係を明らかにしていく予定である。
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