本研究は、アルカリ溶解法を用いたコメットアッセイによるヒト腫瘍内の低酸素細胞分画の測定を目的とする。前年度までに、マウス実験腫瘍において、アルカリ溶解法を用いたコメットアッセイが低酸素細胞分画の検出に有用であることを明らかにしてきた。さらに、前年度より、京都大学医学部医の倫理委員会からの指針を得て、臨床症例での腫瘍内低酸素分画測定を行っている。対象は子宮頸癌腔内照射例、膵癌術中照射例、骨軟部腫瘍術中照射例である。現在までに、子宮頸癌腔内照射1例と骨肉腫術中照射1例、膵癌2例ににおいて測定が可能であった。子宮頸癌症例では、腔内照射の直前・直後に21Gの注射針による吸引にて細胞を採取した。膵癌症例では照射直前・直後に生検針にて細胞を採取、骨肉腫症例では照射後に組織片を採取しそれぞれコメットアッセイを行った。子宮頸癌例では5例で測定を試みたがうち4例では吸引時の血液混入が多くAssayの妨げとなった。また膵癌は2例で測定を試みたが、1例では腫瘤を形成せず線維化の強い腫瘍であったため、細胞量が不十分で測定に至らなかった。現在まで測定できた症例での低酸素細胞分画は4から5%であった。今後は、測定不可能であった症例での原因を明らかにし、成功率をより高めるとともに、測定結果と放射線治療後の一次効果および予後との関係を明らかにしていく予定である。 基礎的研究として、マウス実験腫瘍において、中間的酸素分圧を呈する細胞分画の測定の可否をコメットアッセイを用いて検討中であり、次年度も引き続き研究を進める。
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