本研究は、アルカリ溶解法を用いたコメットアッセイによるヒト腫瘍内の低酸素細胞分画の測定を目的とする。前年度までに、マウス実験腫瘍においてアルカリ溶解法を用いたコメットアッセイによる低酸素細胞分画法の改良を行い、さらに京都大学医学部医の倫理委員会からの指針を得て、臨床症例での腫瘍内低酸素分画測定を行った。子宮頸癌腔内照射例では成功率が1/5と低かったため、本年度は膵癌および骨肉腫術中照射例のみで測定を行った。膵癌症例では電子線を用いて25から30Gyの術中照射を行い、照射直前・直後に生検針にて細胞を採取した。骨肉腫症例では80Gyの術中照射直後に組織片を採取した。検体は氷温水中で単細胞に分離し、それぞれアルカリ溶液で細胞を処理後コメットアッセイを行った。各細胞のコメットのテイルモーメントとDNA障害の程度が相関するため、テイルモーメントのヒストグラムを作成した。 膵癌3例、骨肉腫4例で測定を試み、膵癌では3例で骨肉腫では2例で測定可能な細胞数を得た。マウス実験腫瘍の場合DNA障害の小さな低酸素細胞とDNA障害の大きな正酸素細胞とで明らかに異なる二峰性の分布を示すので容易に低酸素細胞分画の測定可能であった。一方、臨床例では両者の分離が困難で、正確な低酸素細胞分画の算出は困難であった。各細胞のコメットのテイルモーメントのヒストグラムから、DNA障害の小さな分画を放射線抵抗性分画として算出した。この放射線抵抗性分画は4.2から21%であった。
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