本研究の成果は、以下のように要約される。 1.既に開発した脂溶性プロドラッグの妥当性を評価するために、1-FTMのα-炭素を水素化したモデル化合物にてエステル化の効果を検討した。メチルエステル体の脂溶性は向上し、高い脳移行性が確認された。よって、脳機能診断薬開発におけるエステル化の有用性が示された。 2.アミノ酸膜能動輸送機構の利用を考え、DOPA構造類似体のヨウ素標識体の脳内ドーパミン生合成機能測定の可能性を検討した。I-L-mTyrはアミノ酸膜能動輸送機構により脳や膵臓に高く集積した。同時に、高い代謝安定性と体外排泄性を具備していることから、アミノ酸膜輸送機能診断薬として有用であることが示された。 3.2種のI-L-mTyr位置異性体を分取し体内挙動を比較した。6位標識体(6-I-L-mTyr)ではマウス脳に滞留した。この脳集積は、立体選択的なエネルギー依存性能動輸送機構によるものであり、AADCの中枢性阻害剤で前処置した場合、中脳領域の集積が無処置群と比較して低下した。よって、6-I-L-mTyrは脳内ドーパミン作働性神経終末機能診断薬として有用であると考えられた。 4.代謝安定性を具備する数種のヨウ素標識アミノ酸を選択し、腎排泄機序を詳しく検討した。その結果、多くは有機酸輸送系に関与しており、アミノ酸輸送蛋白の特定アイソフォーム発現系における輸送特性から、I-AMTが、特定トランスポーターに高親和性を示すことを見い出した。 5.脳機能診断薬の血清蛋白結合部位において置換効果を有する安全性の高い薬物を用い、血中遊離濃度を増大させ、脳移行性の向上と体外排泄の促進を試みた。脳血流診断薬I-IMPの血清蛋白結合部位を同定すると共に、競合阻害効果を示す安全性の高い置換薬を併用し、組織移行性の決定因子である血中遊離濃度を顕著に増加させ得ることを確認した。
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