本研究の目的は、現在各種医療機関で使用されているガンマカメラに替わる可搬型で高効率・高分解能の核医学診断装置を開発することにある。そのため、平成11年度は12チャンネルのCdZnTe検出器配列モジュールを特注製作し、その基本特性を調べた。 平成12年度は、この配列モジュールを空間的に1次元走査して、放射線ミニファントムのエネルギー選別計数値をコンピュータに取り込み、核医学診断画像を構成するソフトウェアを開発した。更にもう1式ペルティエ素子冷却型の単一高分解能Si-PIN X線検出器系を購入して各種放射線源のX線・ガンマ線スペクトルを測定し、エネルギー分解能と検出効率を調べた。平成13年度と14年度は、これまでの配列モジュールの手動走査に代わり、パルスモータ駆動の電動ステージを導入し、コンピュータ制御で高精度の2次元空間走査が出来るように改良した。次に、^<241>Am大面積平面線源を特注製作し、これとSi-PIN検出器系を用いて、このミニファントムの高精度1次元画像を取得した。同様に、この大面積線源とCdZnTe検出器配列モジュールを用いて、このミニファントムの2次元核医学画像を取得した。両者の画像を、異なるエネルギー幅ごとに比較・検討し、最も高分解能画像が得られる条件を調べている。その結果、常温動作型のCdZnTe検出器配列のエネルギー分解能はSi-PIN検出器に劣るものの従来のNaI (Tl)よりはるかに優れていた。更に、検出効率も極めて大きく、従来のガンマカメラの性能を大幅に改善できる可能性を有することが分かった。
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