研究概要 |
(1)マウス繊維肉腫NFSaのアポトーシスは,非照射時0.8%だが,ガンマ線照射1日後に3%,炭素線照射後1.5日で13%出現した.照射2日までに出現するアポトーシスはガンマ線照射を腫瘍低酸素下で行うと減少したが,照射後3日以降に出現するアポトーシスは低酸素処理により影響を受けなかった.照射後早期に起こる再酸素化と遅く起こる再酸素化は異なる機構によることが示唆された.腫瘍細胞をガラスチャンバー内に封入し,酸素電極にて酸素濃度を計測したところ,炭素線はX線よりも顕著な酸素消費量低下をもたらした.酸素消費量低下が炭素線照射後の早期再酸素化を引き起こした可能性が示唆された.(2)ヒト由来肺がんAOI細胞を約10mmHgの低酸素下で培養開始後6ないし24時間に,解糖系酵素,グルコース輸送系酵素および血管形成関連蛋白の遺伝子が有意に上昇することをノーザン法にて見いだした.(3)X線照射したヒト単球系白血病細胞株THP1では転写因子NFkBは活性化され,同時にIkBの減少とリン酸化が認められた.外因性に加えたTNFでも同様な変化があり,TNF中和抗体は放射線によるNFkBの活性化を阻害した.NF knock out miceのmacrophageでは放射線でNFkBの活性化は見られなかった.NFkBの活性化はTNF等によるapoptosisの阻害につながる事が報告されており,放射線はapoptosis,抗apoptosis両方の経路を同時に活性化することが示唆された.
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