平成11年度研究実績 (1)セロトニン-2A受容体に特異的なペプチドに対する抗体の作製とヒト脳での免疫組織化学的検討。 感情障害における病態の一つとしてセロトニン2A受容体の機能亢進が確実視されているが、セロトニン2C受容体とは薬理学的に区別することができないので、放射性リガンドを用いた受容体結合でヒト脳におけるセロトニン2A受容体の発現量の変化や分布の異常を明らかにすることは困難である。そこで、セロトニン2A受容体に特異的なアミノ酸配列を示すペプチドに対する抗体を作製し、ヒト脳での免疫組織化学によるセロトニン2A受容体の分布を検索した。その結果、腹側被蓋野や黒質の神経にセロトニン2A受容体が存在することを証明し、ドーパミンの合成律速酵素であるチロシン水酸化酵素の抗体との二重染色でこのセロトニン2A受容体を有する神経がドーパミン神経であることも明らかにした。この発見はセロトニン系とドーパミン系とが相互に作用し会うという根拠の一つとなるので、Brain Research 誌に報告した。今後、この免疫組織化学という方法論が確立できたことから、抑制性のアミノ酸神経伝達を担うGABA神経の発現頻度やセロトニン2A受容体との相互関連を感情障害脳で検討することが可能となった。 (2)躁うつ病などの感情障害死後脳の収集 未服薬の感情障害患者の脳内糖代謝をPETで検索し、前頭葉の神経機能の低下を示す患者が約60%以上存在することを明らかにしてきたので、その機能異常の脳内基板としての脳組織病理学的異常の有無を明らかにするため、感情障害死後脳を収集している滋賀医科大学法医学教室との共同研究が始まり、また、感情障害罹患中の自殺者の死後脳の収集も始めており、感情障害の脳組織病理学的研究を推進する態制は整ってきている。
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