研究概要 |
DSM-IVの診断基準をみたす大うつ病患者で抗うつ薬未服薬の24症例に対しDEX/CRH検査と^<18>F-FDG-PETを施行した。さらに抗うつ薬治療に反応した10人を対象に同検査を治療前後で実施し、うつ病態の脳内責任部位を明らかにする研究を行った。この24名に関するDEX/CRH検査の結果では75%(18/24)が非抑制であった。また、これらの症例について既往の自殺企図の有無とDEX/CRH検査での抑制/非抑制の関連をみると、非抑制群で既往に自殺企図を有している割合が有意に高かった。次に、治療前後での10症例に関するDEX/CRH検査では治療前70%(7/10)が非抑制であったが、治療後は20%(2/10)が非抑制と著明に改善していた。 一方、^<18>F-FDG-PET画像をSPMにより統計解析した結果、抗うつ薬療法前の24症例と抗うつ薬治療前後の比較の検査が施行できた10名とで、共通して、健常者群との間に糖代謝が有意に(p≦0.001,ncorrected)減少していた領域は左側前頭前野、右側上側頭回であった。また増加していた領域は右海馬傍回であった。治療後では右側上側頭回の減少は残存したままであったが、それ以外の治療前に変化していた領域はいずれも治療後には正常化していた。 さらに24名のDEX/CRH検査での抑制群(6名)と非抑制群(18名)についてSPM解析を施行したところ(p≦0.001,uncorrected)、抑制群に対し、非抑制群で糖代謝が減少していた領域が右側海馬傍回であった。 これらの部位の細胞構築学的検討により、うつ病発症脆弱性の脳内基磐を明らかにできる可能性があるので、感情障害死後脳における組織学的な異常の有無に関する研究に着手した。6例の躁うつ病や老年期うつ病と6例の対照とについて海馬歯状回の神経新生の測定を細胞分裂期にのみ核内に出現するKi67タンパク質の出現の有無で解析し、うつ病で低頻度という予備的な結果を得た。
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