自閉性障害の初期徴候、および彼らの独特な音声言語の音響学的検討に関する2つの研究を行った。 【研究1】初期徴候に関する研究 [対象]自閉性障害群(13例)、正常対照群(8例)、注意欠陥/多動性障害群(4例)、表出性発達性言語障害群(4名)、および難聴児1例についての比較検討を行った。[方法]0〜2歳までのホーム・ビデオ記録を、(1)社会的相互作用の障害、(2)情緒の障害、(3)知覚の障害、(4)運動・筋トーヌスの障害、(5)行動の障害の5つのカテゴリーについて分析した。[結果]生後6カ月以前から認められる知覚行動は初期徴候と考えられた。社会的相互作用の障害と情緒の障害は、初期徴候である可能性が高いが確定できなかった。協調運動の障害、運動・筋トーヌスの障害は、脳機能障害の障害との関連でさらに検討が必要である。行動の障害は、12カ月以前では、社会的相互作用や知覚に関する行動が多く、13カ月以降にそれらが複合して固執行動が形成されると推測された。 【研究2】音声言語の音響学的研究 [対象と方法](1)2〜6歳の健常児116名から音声言語を収集し、その音声データを音声分析装置を用いて分析し、5母音の発達過程をf1・f2図を作成して検討した。さらに、(2)高機能広汎性発達障害およびアスペルガー障害20例にsaita-taita-aitaと連続的に変化する合成音を聞かせ、識別・模倣実験を行った。[結果](1)これまでに分析が終了した健常児33名の結果からは、構音の発達段階である幼児期においてはf2が獲得された後に、会話を話しながら徐々にf1が母音別に分化していくと推測された。(2)アスペルガー障害8例の分析結果から、語音識別率によって3群に分類することができた。この結果から、自閉性障害では発話時の補足運動野からの抑制が十分に作用せず、聴覚連合野の活性が高い可能性があると考えられた。 【まとめ】 自閉性障害の初期徴侯として独特な知覚行動が抽出され、特有な音声言語についての音響学的分析の結果、発話時の補足運動野からの抑制が十分に作用せず、聴覚連合野の活性が高いことが示唆された。これらの結果を、広汎性発達障害の治療・療育プログラムに導入するための基礎研究を続けていく必要がある。
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