研究概要 |
非血縁者間骨髄移植症例の特徴は(1)重症移植片対宿主病(GVHD)発症率の増加、(2)生着不全率の増加、(3)白血病における移植後の再発率の低下(移植片対白血病効果:GVL)であり、これらの事象に患者とドナー間の組織適合性抗原の違い、とくにHLA-A, B, Cのクラス1抗原のDNA型の違いが重要であることが明らかになりつつあり、その詳細を1498例に症例数を増して検討した。その結果、HLA-C抗原の違いに他のHLA抗原、すなわちHLAクラスIであるA, BのDNA型あるいはクラスII抗原であるDRB1、DQB1の違いがあるとさらに重症GVHDの発症率が増加することを確認した。A, B/C/DR, DQの3座不適合では最も発症率が高かった。慢性GVHDの発症にはHLA-A/Bの違いが有意に関与していた。さらに、移植後の生着不全にはクラス1抗原(A, B, C)の違いが有意に関与していることが多変量解析においても示された。HLA-Cを介したGVL効果は再発ハイリスク白血病、急性白血病において見られたが、有意ではなく、症例数を増しての検討が必要である。上記移植免疫反応にたいするHLA抗原の関与を反映して、移植後の生存率はHLA-A・B不適合例、2抗原以上不適合例において低下していた。 ドナー由来のNK細胞はその受容体(CD158など)を介して患者細胞上のHLA抗原を標的としており、上記移植免疫反応、とくにHLA-Cの違いを介した反応にNK細胞が関与している可能性が示唆される。このため、NK細胞受容体(CD158,CD94)陽性細胞の非血縁者間骨髄移植後の発現について解析し、HLA適合同種移植に比べて、発現細胞は同じかやや多いとの結果を得た。 これらの知見は移植免疫反応の機序の解明にとり重要な臨床的データであるとともに、HLA適合度に基くドナー選択のためのデータとなり、非血縁者間骨髄移植の成績に向上に寄与すると考えられる。
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