研究概要 |
日本骨髄バンクを介した移植でのHLA-A B C DRB1 DQB1の遺伝子型適合度と移殖免疫反応と患者の予後についての結果を示す。HLA血清型が適合していてもHLA遺伝子型が異なる症例が半数以上に存在した。重症GVHDを生じた症例の予後は極めて悪かった。重症(III-IV度)急性GVHDの発症率とHLA適合度との関連の解析で、HLA-A, B, C抗原のDNA型の違いの重症GVHDの発症への関与が明らかになった。HLA-Cには他抗原との付加的効果が認められ、急性GVHD発症機序の違いが推測され、MK細胞受容体、とくにKIR (CD158)との関連が示唆された。DR抗原は多変量解析では有意差がみとめられたが、HLAクラスI抗原にくらべ急性GVHDに及ぼす影響はかなり少なかった。HLA-AとBのDNA型の違いは白血病の再発に関与していなかった。HLA-CのDNA型の違いが白血病の再発を低下させる可能性が初期の症例の解析で示されたが、症例を増してのリスク別の解析ではHLA適合度により再発率に有意の差は認められていない。今後、疾患別の解析が必要である。白血病ではHLA-A BのDNA型単独不適合例はHLA適合症例に比べて明らかに移植後の生存率は低下している。この主な原因は高率な重症GVHDによる移植関連死の増加による。これに反し、RLA-CおよびRLA-DRB1の単独不適合は生存に影響を及ぼしていない。HLA2座不適合症例はHLA適合症例に比べあきらかに生存率は低下している。HLA-CとHLA-DR/DQとの不適合組み合わせでも低下しており、これは重症GVHDの増加によるものであろう。HLA3座不適合では生存率はさらに低下している。本研究に基づいた適切なHLA適合度のドナーの選択は血縁者間移植の成績向上に寄与すると考えられた。さらに、NK細胞を介した急性GVHD発症機序が示唆された。
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