腎不全患者および糖尿病患者においては、血清3-DG濃度が高値を示すのみでなく、赤血球中の3-DG濃度も増加している。特に糖尿病合併腎不全患者の赤血球中の3-DGの由来として、主にポリオール経路が関与していることが明らかになった。赤血球内の3-DGは、ポリオール経路の代謝物であるフルクトースおよびフルクトース-3-リン酸から主に生成していると考えられる。細胞内のAGEの生成は、細胞内蛋白のAGE化により細胞機能異常を来す可能性がある。糖尿病性腎不全患者に対してアルドース還元酵素阻害薬(エパルレスタット、150mg/日)を8週間投与したところ、赤血球内においてソルビトール、フルクトースの生成を減少させる結果、3-DGの生成を低下させイミダゾロンの産生を減少させた。3-デオキシグルコソン(3-DG)の生物活性としてグルタチオンペルオキシダーゼの活性を低下させることを明らかにした。腎不全患者、糖尿病患者では赤血球中の3-DG濃度が増加しているため、赤血球内のグルタチオンペルオキシダーゼの活性を低下させ、赤血球内のH_2O_2の処理を低下させ赤血球内の酸化ストレスを亢進させている。 未使用の腹膜透析液中に3-DGが高濃度で存在することを明らかにした。グルコースを含む透析液を酸性条件下において高温で滅菌することによりグルコースの分解産物として3-DGが生成すると考えられる。使用後の腹膜透析液中の3-DG濃度は低下しており、毎回の腹膜透析操作により3-DGが体内に負荷されていることになる。従って、長期の腹膜透析により多量の3-DGが体内に負荷されることにより腹膜のAGE化(イミダゾロンなど)が起こり、硬化性腹膜炎が発症すると思われる。最近、腹膜透析液中の3-DG濃度を低下させるため、隔壁2室バッグとし中性にした腹膜液(ミッドペリックLなど)が開発されている。我々の成績でも、隔壁2室バッグとし中性にした腹膜液中には3-DG濃度の減少が認められた。また、滅菌を加温せず膜濾過により行った腹膜透析液では3-DG濃度は検出限界以下となった。これらの3-DG濃度の低い腹膜透析液をくり返し灌流したin vitro実験では、高濃度の3-DGを含む腹膜透析液に比較してイミダゾロンの生成が著明に低下した。
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