研究課題/領域番号 |
11470221
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研究機関 | 香川医科大学 |
研究代表者 |
大西 鍾壽 香川医科大学, 医学部, 教授 (40080014)
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研究分担者 |
今井 正 香川医科大学, 医学部, 助手 (60176477)
磯部 健一 香川医科大学, 医学部・附属病院, 講師 (00159815)
伊藤 進 香川医科大学, 医学部, 講師 (80145052)
難波 正則 香川医科大学, 医学部, 助手 (90237636)
日下 隆 香川医科大学, 医学部・附属病院, 助手 (50274288)
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キーワード | 新生仔豚 / 新生児仮死 / 低酸素性虚血性脳症 / 脳内グルコース消費量 / 低体温療法 / カラードマイクロスフェレ / 局所脳血流 / 脳内酸素消費量 |
研究概要 |
目的:初年度は、新生仔豚を用いた遅発性脳内エネルギー代謝不全をもたらす新生児仮死モデルを作成し、同時に脳内微小透析法を用いて、神経伝達物質であるグルタミン酸、γ-アミノ酪酸の動態を検討し、遅発性脳内エネルギー代謝不全の発生には興奮性アミノ酸の増加による神経毒性が関係していることを見出した。今年度は新生児仮死における低体温療法の基礎的研究として、新生仔豚を対象に中等度低体温療法での脳温、局所脳血流(rCBF)、脳内の酸素消費量(CMRO_2)、グルコース消費量(CMRglc)の変化について検討した。 対象および方法:生後24時間以内の新生仔豚10頭。脳皮質温、脳深部温、鼻腔内温と直腸温との4ヶ所で体温を連続的に測定した。全身冷却方法にて全身冷却し、脳皮質温を段階的に2時間で39℃から32℃まで低下させその後2時間維持した。RCBFはカラードマイクロスフェレを用い、脳皮質温を39、35、33、32、32℃(2時間維持した後)としたとき、左右の前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉、視床、小脳、脳幹部を測定した。さらに動脈血と上矢状静脈血を用いCMRO_2とCMRglcを算出した。 結果および考察:脳温のモニタリングでは、頭部装着した深部体温計と鼻腔内温が、脳皮質温と極めてよい相関(r=0.995,0.994,p<0.0001)を示した。また低体温中の直腸温は脳皮質温と比較し0.2〜0.5℃低値をとった。rCBFはどの部位でも脳温の低下に伴い有意な血流の減少が認められた。低体温開始前は最も血流の多かった脳幹部での血流の減少率が他のすべての部位と比較して有意に高かった(p<0.05)。CMRO_2、CMRglcはそれぞれ脳温35℃と39℃の間には有意差がみられたが、脳温32℃と35℃、脳温33℃と35℃の間には有意差は認めなかった。よって中等度全身冷却低体温療法では脳幹部の血流が最も低下しやすく、脳幹部の血流低下の起こる全仮死に対しての本療法の適応には十分な注意が必要であると考えられた。今後は低酸素性虚血性脳症の新生仔モデルを用いての検討や選択的頭部冷却法での検討を加えて、新生児領域での低体温療法の安全な適応や施行を検討する予定である。
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