甲状腺ホルモン応答性遺伝子、ZAKI-4、がコードする蛋白の機能解析

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11470225
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 村田 善晴 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (80174308)
• 研究分担者: 古川 鋼一 名古屋大学, 医学部, 教授 (80211530) ; 妹尾 久雄 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (40135380) ; 加納 安彦 名古屋大学, 環境医学研究所, 助手 (50252292)
• キーワード: 甲状腺ホルモン / 脳 / マウス / in situ hybridization / ラット / カルシニューリン

研究概要

T_3応答性遺伝子としてクローニングされたZAKI-4遺伝子がコードするZAKI-4蛋白は、ごく最近の研究により、脳の発達や機能に重要な役割を果たしているカルシニューリンの作用を強く阻害することがin vitroで証明された。本研究は、ZAKI-4遺伝子のノックアウトマウスを作製することによりZAKI-4蛋白のin vivoでの機能を解明し、同時に脳の発達におけるT_3作用の分子機構を解明することを目的としている。平成12年度では、以下のような成果が得られた。
1.ZAKI-4遺伝子のノックアウトのためのターゲティングベクターの構築
昨年度の研究成果よりZAKI-4mRNAには少なくともαとβの2つのアイソフォームが存在することが示された。今年度の検討により、マウスではαの発現は脳に限局するのに対し、βは脳のみならず心臓、骨格筋、腎臓などの組織に広く発現していることが明らかとなった。そこで現在、ZAKI-4βのノックアウトを優先し、ターゲティングベクターを作製しているところである。
2.ラット脳の発達期におけるZAKI-4mRNAの発現変化とこれに及ぼす甲状腺機能低下症の影響
ZAKI-4αおよびβmRNAを共通に認識するプローブを用いて解析した。その結果、ZAKI-4mRNAは、大脳皮質の発達に伴い発現が増加し、この増加が甲状腺機能低下ラットにおいて減弱することが示された。特に、大脳皮質の第VI層における発現は甲状腺機能低下により著明に低下した。
3.抗ZAKI-4抗体の作製
ZAKI-4蛋白の脳内、および細胞内での局在を検討するため、抗ZAKI-4抗体を作製した。得られた抗体を用いたウエスタンブロット解析では、mRNAの発現がつよく認められた心臓、脳において約30kDaの単一バンドが描出された。したがって、ZAKI-4蛋白は糖付加などの翻訳後修飾を受けることが示された。

研究成果

• [文献書誌] SIDDIQ A.,MURATA Y. et al: "Expression of ZAKI-4 messenger RNA in the brain during rat development and effect of hypothyrodism"Endocrinology. 142・5(in press). (2001)
• [文献書誌] FUTAKI S.,MURATA Y. et al: "Identification of a novel myosin-Va mutation in an ataxic mutant rat, dilute-opisthotonus."Mamm.Genome. 11・8. 649-655 (2000)
• [文献書誌] TAKAGISHI Y.,MURATA Y. et al.: "Species-specific difference in distribution of voltage-gated L-type Ca^<2+> channels of cardiac myocytes"Am.J.Physiol.. 279・6. C1963-C1969 (2000)
• [文献書誌] TANG Y-P.,NABESHIMA T. et al.: "Spatiotemporal expression of BDNF in the hippocampus induced by the continuous intracerebroventricular infusion of b-amyloid in rats"Mol.Brain.Res.. 80・2. 188-197 (2000)
• [文献書誌] AOLAD Md.H.,MURATA Y. et al.: "Hydrocephalus in mice following X-irradiation at early gestational stage : Possibly due to persistent deceleration of cell proliferation"J.Radiat.Res.. 41・3. 213-226 (2000)
• [文献書誌] INOUYE M.MURATA Y. et al.: "Similarity between the effects of carbon-ion irradiation and X-irradiation on the development of rat brain"J.Radiat.Res.. 41・3. 303-311 (2000)