研究概要 |
BNPは、主に腹型グアニル酸シクラーゼA(GC-A)を介して利尿作用、血管拡張作用をもたらすと考えられている。我々の開発したBNP過剰発現トランスジェニック(BNP-Tg)マウスにおいて、血圧低下と心重量減少に加えて椎体・長管骨の伸長亢進が認められ、BNPが循環調節作用のみならず内軟骨性骨化促進作用を有する可能性が示唆された(Proc.Natl.Acad.Sci.USA95:2337-2342,1998)。今回、BNPの循環器系および骨格系への作用がGC-Aのみを介するか否かを検討する目的でGC-A欠損(GC-A-/-)BNP-Tgマウスを作製し、表現型の検討を行った。BNP-TgマウスとGC-A-/-マウスの交配により、GC-A-/-BNP-Tgマウスを作製した。5ヵ月齢の雄性マウスの心重量体重比およびtail-cuff法にて測定した収縮期血圧は、BNP-TgマウスではGC-A+/+マウスと比較して有意に低下していたが、GC-A-/-BNP-TgマウスにおいてはGC-A-/-マウスと比較して差は認められなかった。一方、GC-A-/-マウスにおいて認められた心筋線維化が、GC-A-/-BNP-Tgマウスにおいて有意に抑制されていた。また、5ヵ月齢の雌性マウスにおいてBNP-TgマウスあるいはGC-A-/-BNP-Tgマウスの第5腰椎および脛骨長軸長は、それぞれGC-A+/+マウスあるいはGC-A-/-マウスと比較して同程度に有意に伸長していた。BNPの降圧および心肥大抑制作用はGC-Aのみを介するが、心筋線維化抑制作用および内軟骨性骨化促進作用はGC-A以外の受容体を介することが明らかになった。
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