研究概要 |
1.破骨細胞前駆細胞におけるsRANKLによる初期誘導遺伝子群の同定 マルトース結合タンパクとヒトRANKLの細胞外領域との融合タンパクMBP-hsRANKLを作成し、破骨細胞誘導活性を確認した.次にヒト前骨髄球性白血病細胞株HL-60を活性型ビタミンDおよびTPAで処理し分化を促進することにより機能的なRANKの発現が誘導されることを見出した。そこでマウス脾細胞、破骨細胞前駆細胞株C-7および分化誘導後のHL-60をMBP-hsRANKにより4時間刺激し,刺激前後の細胞から精製したpolyA+RNAのdifferential displayを行うことより幾つかのRANKL標的遺伝子の候補を同定した.現在,これらの遺伝子の発現誘導の確認およびシークエンスを進めている. 2.骨髄腫細胞(MM)による破骨細胞分化促進作用の検討 MMによる破骨細胞分化促進作用にはMMが産生するケモカインであるMIP-1alphaおよびbetaが重要な役割を果たしていることが明らかとなった.MIP-1は骨髄間質細胞膜上の受容体CCR5を介してRANKLの発現を高める一方、自らが発現するVLA-4の活性化により骨髄間質細胞が発現するVCAM-1への接着を促すことにより相互作用を高めることが示された。一方,破骨細胞はIL-6以外の未知の因子により骨髄腫細胞の増殖・生存を高めることが明らかとなり、この作用は細胞間の直接的な相互作用に依存していることが示された。現在この因子の同定を進めている。以上の如く,骨髄腫は破骨細胞や骨髄間質細胞との複雑かつ多様な相互作用により効率良く破骨細胞分化を誘導して骨破壊病変を形成しており、この病態の中でMIP-1が大きな役割を有することが示唆された。
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