研究概要 |
インスリンによる糖輸送促進にはPI3kinaseの活性化が必須であるが、PI3kinase,PDK1,Akt1と続くと考えられているシグナル伝達経路につき、PDK1の各種変異体をアデノウイルスベクターに組み込み、CHO-IR細胞に発現させて検討した。PDK1の野性型(wt),およびK111A変異体(kinase dead:kd)をに発現させ、AKt1のT308とS473のリン酸化および脱リン酸化における役割について検討したところ、Akt1のThr308はインスリン刺激後1分でリン酸化されたが,5分後にはほぼ完全に脱リン酸化された。この上流にあるPDK1(Wt)を過剰発現すると、インスリン刺激によるT308のリン酸化を増大させたが,これも速やかに脱リン酸化された。一方、PDK(Kd)を過剰発現すると、インスリン刺激によるT308のリン酸化が持続し、15分後でもリン酸化状態が保たれているという予想外の結果を得た。すなわち、活性のないPDK1(Kd)の過剰発現は脱リン酸化を抑制しているものと考えられた。また、カリクリンA(protein phosphatase1とprotein phosphatase2Aの阻害剤)をin vivoにて作用させた結果,PDK1(wt)発現細胞、PDK1(Kd)発現細胞のいずれにおいても、T308の脱リン酸化の阻害が認められた。なお、インスリンによってリン酸化されたS473のリン酸化レベルは、PDK1(wt)とPDK1(Kd)のいずれの過剰発現でも影響を受けなかった。以上より、インスリン刺激により、PDK1はAkt1のT308を急速にリン酸化しAkt1活性を高めるが、同時にphosphataseを活性化し、リン酸化されたT308は脱リン酸化されると考えられる。
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