研究分担者 |
升島 努 広島大学, 医学部, 教授 (10136054)
片桐 秀樹 東京大学, 医学部・附属病院, 医員(臨床)
青木 稔 山口大学, 医学部, 助手 (70304475)
田中 敬治 山口大学, 医学部・附属病院, 医員(臨床)
井上 寛 山口大学, 医学部・附属病院, 助手 (20294639)
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研究概要 |
インスリン受容体を発現させたCHO細胞(CHO-IR細胞)ではインスリンを添加すると、Akt1は細胞膜(特にmembrane ruffle)へトランスロケーションし、そこでリン酸化を受け、この移動とリン酸化にはPI3kinase活性化が必須であること、Akt1の移動にはPH domain(PIP3やPIP2と結合する)が必須であるがキナーゼ活性は必要でないことを明らかにした。さらに、membrane ruffleにPI3kinaseも移動すること、ARNOやGRP1のPH domainを発現させると、インスリン刺激によりmembrane ruffleに移動することから、この部位でPI(3,4,5)P3が産生されていると考えられた。すなわち、細胞膜のmembrane ruffle部が、PI3kinase,PI(3,4,5)P3,Akt1の反応の「場」となっていると考えられた。インスリンによる糖輸送促進が顕著に認められる3T3-L1脂肪細胞で、このような「場」の形成とそこへのGLUT4の集合を想定して検討したが、確認できなかった。次に、PI3kinaseとAkt1をつなぐシグナル分子、すなわち、PI3kinase活性化によって増加するPIP3やPIP2に反応してAkt1をリン酸化する分子として同定されたPDK1について検討を進めた。Akt1 308位スレオニン(T308)はインスリン刺激後すでに1分後には最大にリン酸化され、その後急速に脱リン酸化された。野生型PDK1の過剰発現では、上記の現象がさらに増強されて認められ、PI3kinase活性化がPDK1を介してAkt1をリン酸化することを支持したが、dominant negative型PDK1の過剰発現ではAkt1のリン酸化状態が15分後にも維持されており、T308の脱リン酸化が生じないという予想外の結果を得た。検討を進めた結果、インスリン刺激によりAkt1をリン酸化する酵素であるPDK1は、同時に脱リン酸化酵素、おそらくはPP2Aを活性化して、T308を脱リン酸化すると考えられた。一方、473位セリン(S473)はインスリン刺激1分でリン酸化され、15分後にも同じレベルで持続されており、リン酸化レベルがPDK1の酵素活性と相関したことから、T308の早期脱リン酸化後もS473のリン酸化状態によって活性が維持されていると考えられた。なお、我々の検討ては、atypical PKCやAkt1がPDK1-PI3kinaseの下流でインスリンによる糖輸送促進に少なくとも大きな役割は演じていない。
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