昨年度は、α-amanitin 0.1mg/kg とlipopolysaccharide(LPS)1μg/kgを門脈内投与することにより、脳症を含めた典型的な肝不全症状を呈し4日以内に100%死亡するブタ劇症肝不全モデルを確立した。今年度はこの肝不全ブタをレシピエントとした同所性補助的部分肝移植APOLT実験モデルを作成し、グラフト肝機能と病的自己肝の再生について検討した。【方法】体重15〜20kgのブタを3群に分けて検討した。A群(対照群 n=5)はα-amanitin(0.1mg/kg)とLPS(1μg/kg)を門脈内投与した。B群(sham op 群 n=5)は薬物投与後に病的肝の左葉切除を行った。C群(APOLT 群 n=9)は薬物投与と左葉切除後に健康なドナーブタから肝左葉グラフトを採取し同所性に部分肝移植した。B群とC群では術後7病日まで免疫抑制剤FK506(0.05mg/kg/day 持続静注)を使用した。C群のうち2頭は術後7病日に、別の2頭は術後14病日に肝生検を行い、同時にグラフトへの門脈および肝動脈の流入血行遮断を行った。【結果】A群は5日以内に全例死亡した。B群では4頭が8日以内に死亡し、1頭が術後17日目に死亡した。C群では全例14日以上生存した。移植後にグラフト肝は速やかに胆汁を産生し、プロトロンビン時間(PT)の短縮など良好な機能を示した。C群において移植後7病日の肝生検で肝再生像を認めた。また剖検時残存自己肝は体重から推定した手術時の残存肝重量と比較して2倍以上に再生肥大しており、組織的にも正常の小葉構造が再構築されていた。グラフト血行遮断を行った4頭はその後2週間以上生存した。【考察】薬物により劇症肝炎状態にある自己肝はAPOLTによる1週間程度の肝機能補助を受けることで形態的にも機能的にも肝再生を果たした。本モデルは劇症肝炎における肝再生に関する研究に有用であると考えられる。
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