平成11年度は、まずキノコ毒成分であるα-amanitin(AAM)を用いてブタ劇症肝不全モデルの作成を行った。体重20kg前後のブタに全身麻酔下にAAM0.1mg/kgと単独では非致死的な少量のlipopolysaccharide(LPS)1μg/kgを門脈内に同時投与すると(n=9)、GOTは24時間以内に7000-11000IU/Lまで上昇し、3頭が24時間以内に、残り6頭も4日以内に死亡した。また、著しい低血糖と、血清ビリルビン、乳酸値及びNH3値の上昇、ヘパプラスチンテスト(HPT)の低下(15%以下)とプロトロンビン時間(PT)の延長(35秒以上)、脳圧の亢進など、典型的な肝不全所見を呈した。次に、薬剤投与後16時間に病的肝を摘出し、健常ドナーからのグラフト肝を用いて同所性全肝移植を行ったところ(n=3)、全例移植後回復生存した。以上の結果よりAAM0.1mg/kg+LPS1μg/kg門脈内投与のプロトコールによるこのブタ劇症肝不全モデルは、i)再現性を持って致死的な肝不全となり、ii)障害は肝特異的であり、iii)毒性は遷延しないことよりバイオリアクターなどへも影響を与えない、などの優れた特徴を備えており、有用な実験モデルになりうると考えられる。 平成12年度はこの肝不全ブタをレシピエントとした同所性補助的部分肝移植APOLT実験モデルを作成し、グラフト肝機能と病的自己肝の再生について検討した(n=9)。このうち2頭は術後7病日に、別の2頭は術後14病日に肝生検を行い、同時にグラフトへの門脈および肝動脈の流入血行遮断を行った。その結果、全例14日以上生存し、移植後にグラフト肝は速やかに胆汁を産生し、プロトロンビン時間(PT)の短縮など良好な機能を示した。移植後7病日の肝生検で肝再生像を認め、組織的にも正常の小葉構造が再構築されていた。グラフト血行遮断を行った4頭はその後2週間以上生存した。以上より、劇症肝炎状態にある自己肝は、APOLTによる1週間程度の肝機能補助を受けることで形態的にも機能的にも肝再生を果たすことが示された。
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