研究概要 |
クリティカル領域で広く施行されるようになった持続的血液濾過透析CHDFは過剰なサイトカインを血中から除去する一方で,生体維持に必要な最小濃度のサイトカインは体内に残存させることよりサイトカインモジュレーターとして機能する.CHDFによりサイトカインをモジュレーションすることがMOFの治療や予防に有効であるかどうか,CHDFにより好中球のアポトーシスをモジュレーションできるかどうかについて検討することが本研究の目的である.本年は臨床的予備検討として,重症急性膵炎症例などの多臓器不全に陥る可能性の高い症例に対して,まず過剰なサイトカインが血中に存在するいわゆるhypercytokinemiaの状態である全身性炎症症候群SIRSの基準を満たすか否かを診断し,さらにそれらのSIRS症例においてMOFへと進展する可能性の高いhigh risk SIRSを診断した.これらの症例に対してPMMA膜を用いたCHDFを施行し検体を採取,炎症性サイトカインの血中濃度の変化を経時的に測定すると共に,このCHDFによるサイトカインモジュレーションが全身の細胞障害を軽減し得たか否かを検討した.また同様にCHDFによるサイトカインモジュレーションが全身状態を改善し得たか否かを全身の重症度評価法であるAPACHE-Hを用いて検討した.またサイトカインをモジュレートすることの有効性の機序を探る目的で,CHDF施行前後の好中球のアポトーシスの程度を判定する第一歩としてCHDF施行中の症例における末梢好中球を分離するための各種機材を整備し,好中球分離の実験を行った.さらにアポトーシスを測定するアポトーシスDETECTION KITを購入し整備した.
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