研究概要 |
信州大学第一外科で行われた生体肝移植症例において、肝移植におけるFas/Fas ligandを介したアポトーシスの役割について検討した。検討対象は、肝移植の対象となる末期肝不全症例および肝移植術後症例143例であり、それらの肝組織と末梢血におけるFas,Fas ligand,アポトーシスの発現を免疫組織染色、TUNEL法、PCR、Northern blot、ELISA法を用いて検討した。その結果、劇症肝炎症例では、肝組織に広範なアポトーシス像を認め、soluble Fas ligandの著明な上昇と、肝組織におけるFas/Fas ligand発現を認めた。また、胆道閉鎖症症例においても血清中のsoluble Fas ligandが高値を示すことが明らかとなり、原因不明である本疾患の病態にかかわっている可能性がある。肝移植後においては、急性拒絶反応および再発ウイルス性肝炎の発症に一致して血清中のsoluble Fas ligandが高値を示し、免疫組織染色で肝細胞と胆管上皮細胞にFasの発現およびTリンパ球にFas ligandの発現を認めた。また、これらFas/Fas ligandの発現量については、PCRおよびnothern blotによる定量を行った。ヒトにおけるこれらの知見に関しての報告はこれまでになく、Fas/Fas ligandを介したアポトーシスと末期肝不全、拒絶反応、ウイルス感染症などの病態との深いかかわりを示唆するものとして現在論文作成中である。
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