研究課題/領域番号 |
11470244
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
猪飼 伊和夫 京都大学, 医学研究科, 講師 (60263084)
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研究分担者 |
寺嶋 宏明 京都大学, 医学研究科, 助手 (40314215)
山岡 義生 京都大学, 医学研究科, 教授 (90089102)
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キーワード | 異種免疫反応 / 肝臓 / 補体抑制蛋白 / hDAF / 遺伝子導入ブタ / 溶血 / 人工肝臓 |
研究概要 |
(1)異種免疫反応における肝類洞内皮細胞の液性障害及び活性化に対する検討 摘出ラット肝をヒト血液で灌流する異種灌流モデルを用い、門脈圧・組織変化・TNFα、ICAM-1等の肝非実質細胞の活性化について評価した。異種灌流肝では急速に門脈圧が上昇し、門脈周囲に異種抗体・補体が沈着し、広範囲壊死が認められたが、補体活性抑制剤(1型可溶性補体受容体)を投与すると門脈圧の上昇や肝傷害は認められなかった。異種灌流肝では灌流液中におけるTNFαやICAM-1が補体抑制異種灌流肝と比較し有意に低値であり、広範囲壊死部位での発現が認められなかった。これは異種灌流肝では異種免疫反応による類洞内皮傷害のため微小循環不全に陥り、肝小葉内広範囲の虚血壊死やサイトカインや接着分子の発現の低下をきたしたと考えられた。 (2)ブタ全肝を用いた体外灌流が霊長類へ与える免疫学的影響、及び補体抑制蛋白の遺伝子導入が異種免疫反応に与える影響について検討 異種免疫反応を制御するためにヒト補体抑制蛋白(hDAF)遺伝子を導入したブタ肝臓とwild typeのブタ肝臓を用いた全肝体外灌流型人工肝補助装置において、霊長類である健常ヒヒとの交差灌流を行い比較検討した。wild type群の第一例は10時間の交差灌流を行ったが、溶血による急性腎不全にて2日後に死亡した。その後の5例では4.4±1.2時間で交差灌流を中止すると、ヒヒは一過性の血小板の低下、貧血をきたすものの腎機能障害などの重篤な合併症は発現せず1年以上生存した。交差灌流前後におけるヒヒの末梢血リンパ球の解析では有意な変化はなく、ヒヒに対する免疫学的影響は軽微であった。ヒヒ抗ブタ抗体価は1週間から1ヶ月後に一過性に上昇したが、3ヶ月後には正常に復していた。hDAF群では灌流圧上昇、溶血とも軽度で、23±4.2時間の交差灌流を安全に行うことができ、重篤な合併症なく1年以上生存した。
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