研究課題/領域番号 |
11470246
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 裕 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (90252676)
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研究分担者 |
鍬方 安行 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (50273678)
嶋津 岳士 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (50196474)
杉本 壽 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90127241)
塩崎 忠彦 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (60278687)
小倉 裕司 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70301265)
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キーワード | 多臓器不全 / 白血球機能 / NF-κB / マイクロパーテイクル / zymosan / G-CSF |
研究概要 |
本研究の目的は重度外傷や熱傷、敗血症に伴う多臓器不全の機序を白血球機能の点から明らかにし、新たなる治療戦略を構築することである。本年度、臨床研究では、重症急性病態時や多臓器不全時の白血球機能(白血球核内転写因子であるNF-κB、白血球マイクロパーテイクル、接着分子CD11b)をフローサイトメトリー法で測定した。その結果、侵襲時にはNF-κBが上昇すること、白血球をLPSで刺激した場合、健常人に比し患者白血球から有意にNF-κBが発現されることを明らかにした。白血球マイクロパーテイクルの産生も侵襲病態では亢進していた。さらにCD11bの発現は同パ-テイクルの以下のサイズに有意に高く発現していることが明らかとなった。多臓器不全の発症要因としてマイクロパーテイクルを介した血管内皮障害が引き起こされることが示唆された。動物実験では、zymosan腹腔内投与によるラット多臓器不全モデルを確立した。このモデルではzymosanの濃度依存性に死亡率が増加した。炎症反応のピーク時(投与18時間後)の血液学的検査では、肝機能、腎機能の障害を認めた。血中補体価は低下し、内因性のステロイド濃度も有意に低下した。さらに、血中一酸化窒素(NO)代謝産物であるNO2/NO3濃度は有意に上昇した。同モデルを用いて、granulocyte colony-stimulating factor(G-CSF)投与が多臓器不全を抑制するか否かを検討した。その結果、G-CSF(100μg/kg、zymosan投与3日前より1日一回皮下注、および投与後0,6時間後に皮下注)投与により24、48時間後の死亡率がそれぞれ50%、80%から10%、30%に有意に抑制された。G-CSF投与群では18時間後の末梢血白血球数、腹水量にはzymosan単独投与群と差を認めなかった。一方、腹水中の白血球数はG-CSF群で著明に増加していた。さらに血中NO2/NO3濃度は両群で上昇したがG-CSF群で有意に高く、G-CSFの死亡率抑制効果がNOの産生制御を介したものではないことが明らかとなった。現在、多臓器不全の発症因子を探索する目的でzymosan投与群、G-CSF処理群、対照群との間で各臓器(肝、肺、腎、脳、腸管、等)で発現が増強または低下する遺伝子をdifferential display法で解析中である。今までの結果、zymosan群の肝で有意に発現が増強する遺伝子2つと、肺で発現が低下する遺伝子を1つ見出しており、それらの同定を行っている。
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