研究概要 |
1.血栓症や出血など成因としての異常フィブリノゲン(fibrinogen,Fbg)の解析: 過去2回の出産に際して重篤な出血をきたした36歳の女性に見い出された異常Fbg Osaka VIでは、Bβ鎖遺伝子の停止コドン(TAG)がLysを規定する(AAG)に置換しており、C末に12アミノ酸残基断片が付加されていた。新たなC末第2位のCys残基を介して異常分子間でヂスルフィド結合が形成され、電子顕微鏡で両側あるいは一側で結合した異常分子のダイマー(end-linked homodimer)が証明された。フィブリン線維は異常に細く且つ分岐に富む緻密な網目を作っていた。フィブリン線維形成時に異常分子ダイマーが組み込まれる部位で、分岐が生ずるものと考えられる。フィブリン網は緻密にも拘わらず脆弱で、機械的外力により網目構造は容易に圧縮損傷され、堅固な止血血栓として機能出来ないことから出血に結びついたと推察した(Blood 96(12):3779-3785,2000)。同様に緻密なフィブリン塊を形成するにも拘わらず、水溶液の通過性が低く、プラスミンに抵抗して血栓症の成因となったFbg Marburg(Blood91(9):3282-3288,1998)と対比される所見である。また余剰糖鎖を持つ三つの異常分子について、余剰糖鎖の関与する機構についても検討した(Ann NY Acad Sci,印刷中)。研究代表者松田は国内外での学会での特別講演やシンポジウムで、これらの成績を総括して紹介した(研究発表欄参照)。 2.その他: Fbgのエラスターゼ分解産物に特異的な抗体、IF-123(Blood 96(5):1721-1728,2000)および抗血管新生を目指してブタ・エラスターゼ遺伝子を組み込んだ動物実験での遺伝子治療の新しい試み(Cancer Gene Therapy 7(4):589-596,2000)を報告した。
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