研究分担者 |
織井 崇 東北大学, 医学部・附属病院, 助手 (20282048)
土井 秀之 東北大学, 医学部・附属病院, 講師 (90188839)
藤盛 啓成 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (50238622)
黒川 良望 東北大学, 医学部・附属病院, 講師 (80215087)
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研究概要 |
【目的と方法】移植臓器の不足は我が国のみならず世界的にも深刻な問題である.その解決策の一つとして心停止ドナー(NHBD)からの肝移植が考えられるが,グラフトへの過大な虚血・再灌流障害の加わる事が想定され,臨床への導入は困難である。我々は本研究において心停止肝移植の臨床応用を目的として,NHBD肝における障害発生メカニズムを解明するとともに,その防止方法について検討した。<実験1>NHBD肝における分子生物学的変化:サイトカイン・エイコサノイド産生と転写因子活性についてラット肝灌流モデルを用いて検討し,併せてクッパー細胞機能による変化を比較検討した。<実験2>NHBDからの肝移植実験:温阻血障害発生予防の薬剤で前処置を施したブタNHBDを用いて肝移植実験を行い,主として再灌流時の問題点について検討した.クッパー細胞除去の有無もしくはプロテアーゼインヒビター(PI)リンス投与の有無で四群に分け比較検討した.<実験3>臨床を想定したNHBDからの肝移植実験:臨床応用を念頭に置き,術中投与可能な薬剤のみを用いてブタNHBDからの移植実験を行った.PGE_1投与の有無,IL-1β拮抗薬(FR)の投与の有無で四群に分けた.【結果】<実験1>NHBD肝では再灌流後に各種転写因子活性とIL-1β産生が上昇し,エイコサノイド産生ではトロンボキサン優位に傾いた.これらの変化はクッパー細胞除去により抑制された.<実験2>クッパー細胞除去は類洞内皮細胞障害を軽減し,PIリンスは類洞の狭小化を改善した.両方の処置を行ったレシピエントで生存を得た。<実験3>PGE_1は温阻血時の,またFRは再灌流時の類洞内皮細胞および肝実質細胞障害を軽減した.両方の処置を行ったレシピエントで生存を得た.【まとめ】NHBDからの肝移植成功の鍵は,1)温阻血時の細胞膜脆弱化の制御:PGE_1およびPIが有効,2)再灌流時のクッパー細胞機能の制御:FRおよびPIが有効,3)再灌流時の類洞狭小化に伴う肝微少循環の維持:PIリンスが有効,以上三点に要約されると結論できる.
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