研究課題
TAEの良い適応とされる結節型の肝細胞癌にでも、一度のTAE施行にみでは十分なる腫瘍の塞栓物質の蓄積を期待できない。まして、門脈血支配を受けるとされる瀰漫型や塊状型を呈する肝細胞癌に対しては、TAEは無効となることが多い。われわれは従来より、肝細胞癌とエフェクター細胞であるLAK細胞を架橋するBsAbを作製し、モデル実験にいたる基礎的検討を終了しており、今後の展開としては肝細胞癌の臨床例に対する局所投与による臨床効果の解析を検討していた。この際、問題となるのは腫瘍細胞周囲の正常肝細胞への障害を極力防ぐことであった。この目的に合致する方法として、超常磁性酸化鉄をコアとして、その表面を多糖類の被覆剤で包んだ物質を新しい塞栓子として選択し、腫瘍のfocusingを磁場発生装置による体外からの磁界制御により、腫瘍の存在部位に比して過不足のないようにおこなうことを考案した。さらに被覆のコロイドに肝細胞癌に対するBsAbと抗癌剤を吸着させることで、コロイドの自然崩壊過程で、これら抗腫瘍効果を有する物質が腫瘍に直接的に働き、支配動脈の塞栓効果に相乗的な抗腫瘍効果が得られることをめざした。平成12年度は大動物および臨床に使用する磁界発生装置の開発をめざした。空芯コイルが2個離れて向き合った形式のワイス型マグネットを使用しコイル間隔を40cmとし、磁束密度勾配が1kG/cmとすると、コイル端面での磁束密度として5Teslaが必要となる。体重40KgのSPFブタを用いて、作製した大動物用の磁場発生装置を用いて開腹下に門脈本幹内にカテーテルを留置し、これより昨年度確立した磁性体試料を投与した。磁場発生装置にて目標とする肝葉に磁性体を集積させた。磁場をかけたまま犠死、凍結させた上で採肝して、フォーカシングした肝葉と他の部位の肝葉を採取してホモジェネートし、鉄の定量と磁化率の測定を行った。その結果、フォーカシングした肝葉に約2.5倍の鉄の集積が認められた。また、組織学的にはフォーカシングした肝区域の肝類洞内に磁性体の重合が確認され、磁界制御による塞栓物質の肝区域における集積勾配をかけることが、可能であることが確認された。
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