研究概要 |
本研究は、安全な免疫抑制離脱を目指し、ヒト完全離脱症例(以下、離脱症例)を免疫学的に検討することにより免疫寛容のメカニズムに迫ること、減量・中止に踏み切る科学的根拠を発見すること、さらに臨床で新たな完全離脱を試みることを目的とした。まず、MLRによって離脱症例リンパ球の対ドナー選択的反応性低下を証明した。さらに、MLR上清中のサイトカインを定量し、離脱症例ではTh1系サイトカインが低値となることを明らかとした。これによりリンパ球サイトカインの寛容への関与が示唆されたが、TH1,Th2サイトカインの肝内遺伝子発現量はドナー開腹時の検体と比較して有意差を認めなかった。さらに,離脱症例の血清を添加した3rd partyリンパ球混合試験において非特異的免疫抑制効果が示されたが,免疫抑制物質の同定には成功していない。現在,細胞因子に注目し,ラットのレベルで報告されている免疫抑制効果を持つreguratory T cellのヒトでの存在・役割を離脱症例において検討した。健常人に比べ、CD4+/CD25+細胞は増加しており、in vitroでの機能評価を今後行う予定である。また、ラット肝移植モデルにおいて免疫寛容に働いていることが報告された種類のgamma/delta TCRを有するT細胞が離脱症例の末梢血で増加しており、この種のT細胞がMLRを抑制することをin vitroで確認した。さらに術後一年の免疫抑制剤内服中の患者では、約半数にこの現象が見られたことから、これらの症例が免疫寛容の成立する候補者になりうるのではないかと考えprospectiveに研究を進めている。 一方、今年度末までに京都大学での移植症例は900例を越えた。従来の臨床計過に基づく判断で着実・安全に計画的減量・中止を行った結果、1998年には離脱症例は15例であったが、2002年末には非計画的中止例25例と計画的離脱症例24例の計49例に達しさらに36例がプロトコール減量中である。
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