研究概要 |
IGF2(Insulin-like growth factor 2)とH19遺伝子はインプリンティングを受ける遺伝子で,IGF2は成長促進,H19は腫瘍抑制作用を持つ.これらにLoss of imprinting(LOI)がおこると,腫瘍発生につながると考えられる.大腸癌では癌腫におけるIGF2のLOIが血液中のリンパ球において認められており,インプリンティング異常が後天的より遺伝子的な要因でおこりうることが示唆された.現在われわれは,胃癌,大腸癌患者において手術後の癌組織,正常組織サンプルを採取するとともに,患者血液を採取し,正常の胃粘膜や大腸粘膜また血液中のリンパ球でもインプリンティング異常が発現しているのか否かを検討中である.さらに,過去において教室で治療を受けた胃癌患者926例の家系を調査し,一般外来患者2116例をコントロールとして,家系内に胃癌が多発するという事象が胃癌発生の危険因子となりうるか否かを検討した.その結果,三親等以内に胃癌に罹患した家族を有する例はコントロールの12.3%に対し,胃癌患者では23.3%と有意に高率であった.また,胃癌患者で,三親等以内に胃癌に罹患した家族の人数が増えるほど,多発胃癌が増加する傾向にあり,多発胃癌発生に何らかの遺伝的要因が関与していることが示唆された.この結果は,第72回日本胃癌学会において発表の予定である.
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