研究概要 |
我々は,肝細胞癌におけるFas発現の減弱が,宿主の免疫機構から逃れる一因であることを見出した(Hepatology,1999)。Fas発現には、p53の正常機能が必要であることも報告したが、p53が正常でもFas発現が減弱している症例を認めた。そこで、Fas発現を増強すると言われているIFN-γとの関連を検討した。すなわち凍結切片上で、肝細胞癌におけるIFN-γ受容体の発現とIFN-γ陽性リンパ球を検討した。硬変肝細胞におけるIFN-γ受容体の発現は、正常肝細胞に比べて増強していた。肝細胞癌44例中、IFN-γ受容体陽性肝癌は29例であり、陰性例は15例であった。臨床病理学的因子との関連では、IFN-γ受容体陰性例は有意に腫瘍径が大きく、肝内転移・遠隔転移が高率であった。また、細胞増殖活性としてKi-67染色を行ったところ、陰性例で有意にKi-67が高値であった。Fas発現との関連においては、Fas陽性肝癌14例は、全例IFN-γ受容体陽性であり、Fas陰性30例中IFN-γ受容体陰性例は15例であった(p=0.001)。IFN-γ陽性リンパ球浸潤とFas発現との間には、関連はなかった。また、IFN-γにより誘導されるMHC class-Iの発現を検討したところ、IFN-γ受容体とMHC class-I発現との間には有意な相関を認めた。従って、IFN-γ signalの異常が肝細胞癌における免疫回避機構の主因である可能性が示唆された。
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