研究概要 |
本研究の目的は臓器移植において依然として大きな問題である急性および慢性拒絶反応を制御することにある.我々は抗原認識において抑制的なCTLA4-Ig分子に注目し,遺伝子銃を用いて移植臓器に導入し,移植局所でのドナー特異的な免疫寛容の誘導を試みた. 1)CTLA4-Igプラスミドの作成および遺伝子発現の基礎的検討 2)遺伝子銃を用いたin vivo遺伝子導入 3)CTLA4-Ig遺伝子導入皮膚の同種移植における有効性の検討 遺伝子銃によるマウス各組織に対する遺伝子導入では,とくに表皮および肝臓,筋組織での導入遺伝子の発現が確認された.これをうけて我々はBALB/cマウス皮膚に対しCTLA4-Ig遺伝子を導入し,この皮膚片をBALB/cマウスに対して純系移植,またC57BL/6マウスに対し同種皮膚移植を行った.同種移植での移植片の生着延長は得られなかったものの,遺伝子発現は純系移植によって影響を受けないことが確認された.CTLA4-Ig遺伝子導入皮膚移植片が同種皮膚移植において有意な生着延長が得られなかった原因としては,皮膚特異的な抗原性の問題に加えて,遺伝子導入時の組織損傷に起因する炎症反応の関与が想定された. 4)CTLA4-Ig遺伝子導入心の同種移植における有効性の検討 ラット各組織における遺伝子発現についても検討した結果,筋組織および肝臓では遺伝子導入による組織損傷をほとんど認めなかった.この結果より我々は現在,CTLA4-Ig遺伝子導入心の同種移植を行い,急性および慢性拒絶反応に対するCTLA4-Ig遺伝子発現の有効性を検討している.
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