研究概要 |
慢性実験に先立ち、大動物を用いた急性実験において低体温下の人工循環が血管内皮細胞に及ぼす影響について検討した。8頭の雑種成犬を用いた。挿管、静脈麻酔開始後血行動態が安定した時の大腿動脈の流速を測定(A)。頚動脈脱血、大腿動脈送血(中枢側の大腿動脈は結紮)で選択的にローラポンプで下肢に血液を流した。流速は(A)で一定とした。雑種成犬を、3群に分類し(A)群:SHAM operation(n=2)、B群:常温、60分間の下肢への選択的体外循環(n=3)、C群:低温(下肢温;28-30℃)30分間+復温30分間の下肢への選択的体外循環(n=3))以下の測定を行った。(1)体外循環設定前(I)、体外循環設定後(II)、体外循環60分後(III)の下肢中枢側と末梢側の圧較差。(2)C群: (a)(II);ACH0.001μg,0.01μg注入後の中枢圧と中心静脈圧の差 (b)(II);SNP20ng,40ng注入後の中枢圧と中心静脈圧の差 (C)(III);ACH0.001μg,0.01μg注入後の中枢圧と中心静脈圧の差 (d)(III);SNP20ng,40ng注入後の中枢圧と中心静脈圧の差 (結果)(1).統計的有意差は認められなかったが、B群、C群ともに(II)と比較して(III)の圧較差の上昇を認めたが、特にH群にその傾向が強く見られた。(2).(II)、(III)どちらも中枢圧と中心静脈圧の差の減少を認め、類似の反応を示した。 (まとめ)(1).低体温下体外循環後に認められる中枢側と末梢側の圧較差は低体温のみの影響とは考えにくく、多くの因子が関与しているものと思われる。(2).低体温下体外循環後に認められる中枢側と末梢側の圧較差は末梢血管の内皮細胞障害によるものではない。
|