研究概要 |
異種胎児心筋細胞移植に関する研究:心臓移植が再開された現在、次の問題点はドナー心の慢性的不足である。一方、心臓全体ではなく心筋細胞を移植する実験的検討が世界的になされ心機能回復の見込みがあることが報告されている。しかしこれもまた、ドナー心筋細胞に胎児心筋を利用するといった新たな問題点がある。そこで、この点を解決すべく異種胎児心筋細胞の利用、遺伝子導入、実験動物の心機能評価に関する研究を行った。その結果マウス胎児心筋細胞を心筋梗塞作成ラットの梗塞部位への移植においてdiscordant移植にみられる超急性拒絶反応は回避された。さらに長期生着を目指して免疫抑制剤の少量投与を行ったところ1ヶ月後でも生着しており、心筋梗塞患者の新しい治療法として有望な心筋細胞移植の新しいドナーソースとして利用できる可能性があると考えられた。さらに現在、補体活性化抑制遺伝子等の導入による免疫抑制を併用してさらなる生着率の向上を試みている。 遺伝子導入に関する研究:(1)Gene Gun法による心筋へのin vivo遺伝子導入に関して検討した。その結果、最長6週間までの発現を認め、他臓器に導入遺伝子は検出しなかった。本法による心臓へのin vivo遺伝子導入は有用な方法と考えられた。(2)ラット及びヒト培養細胞を対象にEB-Virus episomal Vectorを用いたin vivoおよびin vitro遺伝子導入に関する研究を行った。結果、短期間ではEB-Virus episomal Vectorの方がすべてにおいて強く発現した。 ラット及びマウスの心機能評価に関する研究:小動物のラットにコンダクタンスカテーテル法を用いて生体位心での左室圧ESPVRを測定することができた。さらに本年度は装置を調整し,カテーテルの微細化を図り,マウスにおける心機能評価を試みた。その結果、ラットと同様に測定可能であった。現在さらに、その再現性に関して検討を行っているが、本法は実験動物の心機能評価においてきわめて有用な方法であると考えられた。
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