研究概要 |
1.自律神経系に関する検討 拍動流、定常流補助人工心臓使用時の心拍変動の変化に関して比較検討を行った。成山羊に拍動流補助人工心臓を装着し、P群では拍動流左心補助循環をそのまま術後6週目まで継続した。N群では術後2週目に遠心ポンプに交換して定常流左心補助循環を6週目まで継続した。術後2および6週目に3分間の心電図RR間隔を記録した。得られたRR間隔データから心拍変動の低周波数成分(LF)並びに高周波数成分(HF)のパワー値を求めた。P群では2週目に比較して6週目においてLF,HFともに低下傾向を示し、心臓迷走神経の抑制の傾向が認められた。N群では2週目に比較して6週目ではLF,HFともに上昇傾向を示し、心臓迷走神経の亢進の傾向が認められた。以上より、正常動物に左心補助循環を施行した際の心拍変動は拍動流、定常流人工心臓使用時で相反する変化を示すことが明らかとなった。 2.時間補助循環管理法の開発 拍動流、定常流左心補助循環がメラトニン及びレニンのサーカディアンリズム(CR)に与える影響を検討した。成山羊に拍動流左心バイパスを作成し、術後2週間行った後に定常流ポンプを用いた左心バイパスを4週間施行した。拍動流左心バイパス2週目及び定常流ポンプを用いた左心バイパス第2,4週目にメラトニン、レニンについて24時間にわたって測定し最大エントロピー法及び最小2乗法を用いてそのリズム性を検討した。対照としては健常山羊(C群)からの結果を用いた。メラトニンは拍動流、定常流左心補助循環中にもC群同様のCRを有していた。レニンは拍動流、定常流左心補助循環中もCRを認めたが、その位相は左心補助循環中はC群と異なった変動を示し、各左心補助循環中にも一定ではなかった。長期間の拍動流及び定常流左心補助循環の施行時においてもメラトニンのCRは維持されるが、循環調節因子であるレニンのCRに変化が生じる可能性が示された。
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