研究概要 |
脳虚血耐性現象の細胞内機構については今だ解明されておらず、脳虚血におけるMAPK superfamilyの関わりについては不明である。本研究では、小動物において虚血耐性モデルを作成し、MAPK superfamilyのうち、特にERK、JNK、p38について発現および活性化を検討し、虚血性神経細胞死、虚血耐性現象における関与を分子レベルで解明することを目的とした。虚血耐性モデルとして、マウス・砂ネズミ一過性全脳虚血耐性モデル、ラットミトコンドリア神経毒モデルを用いた。平成11年度においては、砂ネズミ一過性全脳虚血モデルにおいて、海馬領域において虚血後にMAPK familyの活性化が起ることを確認し、特に海馬の遅発性神経細胞死においてはp38の関与が大きいことを証明した(J Neurosci 20:4506-4514,2000)。また、ラットミトコンドリア神経毒モデルにおけるMAPKの活性化を証明した(Neurosci Lett278:101-104,2000)。平成12年度では、マウス一過性全脳虚血モデルにおけるJNK、p38およびその活性型酵素の時間的、空間的発現増加を証明し(Neurosci Lett294:117-120,2000)、また、砂ネズミ脳虚血耐性モデルにおいて海馬CA1におけるMAPKの活性化とp38抑制剤による耐性現象抑制効果を証明した。以上のことは、脳虚血におけるMAPKカスケードの活性化が神経細胞の生死に何らかの関わりをもつことを示しており、今後さらに上流、下流の分子について検討を加える予定である。
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