今回、ラット慢性脳静脈圧亢進モデルを作成し慢性脳静脈圧亢進状態の微小循環動態について検討した。雄ラット(n=16)を用いて、全身麻酔下に右総頚動脈と右外頚静脈を端々吻合し、Iaser Doppler"scanning"法で、吻合前・後および二週間後の吻合部結紮前・後に脳表25カ所の局所脳血流(ICBF)と局所脳血液量(ICBV)を測定した。rCBFとrCBVは、それぞれ25データの中央値を用いた。ラットは、以下の2群に分類した;1)A群(n=6):単純右総頚動脈結紮群、2)B群(n=10):右総頚動脈-外頚静脈端々吻合群。その結果、A群の両側半球およびB群の左側半球のrCBF、rCBVの有意な変化はみられなかった。一方、B群の右側半球(頚動脈-外径静脈吻合側)では、吻合前後でrCBF、rCBVに変化はみられなかったが、二週間後のrCBFは有意に低下し(P<0.05)、rCBVは有意に上昇した(P<0.05)。その後、吻合部を結紮すると、即座にrCBFは上昇し(P<0.05)、rCBVは低下した(P<0.05)。一側総頚動脈-外頚静脈吻合モデルは、慢性脳静脈圧亢進状態による虚血(venous ischemia)のモデルとして有用であり、慢性脳静脈圧亢進状態においては、動静脈短絡を閉鎖することによりすみやかに脳潅流圧が上昇し、CBFが改善されることが実験的に証明された。
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