研究概要 |
インスリンは骨・軟骨組織における重要な同化因子であり、後縦靭帯骨化症患者の骨化傾向に血中のインスリンレベルが重要な役割を果たしていることが明らかとなった(J Bone Joint Surg Am 83:1537-1544,2001)。インスリンとIGF-Iの受容体キナーゼ共通の基質であるインスリン受容体基質(IRS-1,IRS-2)はこれらの細胞内情報伝達に必須の分子である。我々は既に、IRS-1欠損マウスの検討によりIRS-1シグナルが骨代謝回転の維持に必須であることを報告した(J Clin Invest105:935-943,2000)。また、IRS-1欠損マウスの骨折治癒は野生型マウスに比べて明らかに抑制されており、IRS-1は骨再生にも重要であることが明らかになった。一方、IRS-2欠損マウスは骨形成の低下と骨吸収の亢進というuncoupling状態を呈した。これは、IRS-2シグナルが骨芽細胞においてその骨形成促進作用を亢進させる一方、RANKL発現を抑制することにより、骨形成作用が骨吸収作用を上回るようにバランス維持に働いているためであるためであることが明らかとなった。この両シグナルの総和として、インスリン/IGF-1による骨代謝に対する強力な同化作用が実現されていることが示された。
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