ヒト脊髄活動測定のための基礎実験として、ネコの胸髄を電気刺激し、頸髄の活動を皮膚上から磁界および電位を用いて測定した。従来から報告されているように、電位による測定では脊髄活動の伝導速度が200〜300m/sと計算され、生理学的な値を逸脱してしまうのに対して、磁界測定では80〜120m/sとなり、硬膜外腔より導出した電位測定による結果と同等であった。これにより、皮膚上から磁界測定は、非侵襲的検査法として電位測定より優れていることが証明された。さらに、脊髄障害モデルを作成し、脊髄誘発磁界を測定した。障害部位において、磁界分布の伝導がブロックする様子が観察され、SQUID磁束計により脊髄病変の診断が可能であることがわかった。以上の研究実績については、第3回生理学研究所脳磁図研究会(1999.12岡崎)、および第22回脊髄電気診断研究会(2000.1東京)において、成果発表を行い、現在論文の投稿準備中である。 ヒトについては、装置形状のヒトへの適合性と装置の安全性を確認するため、まず前腕部における末梢神経の磁界を測定した。手関節部および肘関節部において正中神経より発生した末梢神経誘発磁界が伝導してゆく様子を測定することに成功し、本装置がヒトの末梢神経病変の診断装置としても、臨床応用できる可能性が高いことが判明した。装置の形状は前腕での測定では不適当なところはなく、測定による明らかな人体への悪影響は認められなかった。 ヒトの脊髄誘発磁界の測定を数例に対し行い、シグナルの検出を行った。現在、脊髄誘発磁界としてのシグナルの妥当性について検討を行っている。
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