これまでは骨肉腫特異的な腫瘍マーカーがないため、早期に微少転移を検出したり、化学療法の効果判定を行うための有効な方法がなかった。一方で、骨肉腫は約1/3から半数の症例において、血清中のアルカリフォスファターゼ(ALP)が高値を示し、そのような症例においては予後が悪いことが報告されている。われわれは免疫組織染色法やRT-PCR法を用いて、蛋白、分子レベルにおけるALPの発現について検討を行ってきた。その結果、淡明細胞型軟骨肉腫においても、骨肉腫同様に血清中のALP値が高く、腫瘍自身がALPを産生していることも明らかとなった。これらの結果より、ALPは必ずしも骨肉腫に特異性が高くないことが分かったため、さらに特異性の高い腫瘍マーカーを見いだすべく研究をすすめた。 近年、骨芽細胞のみに特異的に発現する転写因子Cbfa1/Osf2が発見され、骨芽細胞の分化に必須の因子と考えられている。我々はこれまでに、様々な悪性腫瘍細胞に対してCbfa1/Osf2の発現をRT-PCR法により検索した。その結果、悪性腫瘍の中では骨肉腫細胞で特異的に発現していることを確認することができた。さらに正常マウス末梢血中にはCbfa1/Osf2 mRNAは検出できないが、マウス骨肉腫転移モデルでは検出できることに注目した。つまり、本来Cbfa1/Osf2は血球系細胞では発現が認められないため、転移モデルでは骨肉腫細胞が血管内へ浸潤し、全身を循環している状態を示唆しているのではないかと考え、Cbfa1/Osf2 mRNAをターゲットとする事によって、骨肉腫の微少転移の検出が図れるのではないかと考えた。現在までに、末梢血中より有核細胞集団を分離し、末梢血中に存在すると考えられる骨肉腫細胞中のCbfa1/Osf2 mRNAをどの程度の感度で検出可能かを検討した。
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