研究概要 |
ヒトならびに白色家兎の脛骨骨髄より分離したmesenchymal stem cellあるいはmarrow stromal cell(MSC)を培養して増殖させ,そこへCartilage derived morphogenetic protein(CDMP-1/Gdf-5)遺伝子を導入した.プロモーターには組織特異性のないCMVのものと,われわれがクローニングと機能解析を行った軟骨組織特異的エンハンサーに繋いだものを用いた.コントロールとしてGFP遺伝子のみを繋いだものを使用した.CDMP-1遺伝子発現は,導入後1日目より認められ,2日後に遺伝子導入細胞を回収してコラーゲンゲル内に高密度で包埋し,1)無血清の軟骨分化用defined medium内でのin vitro軟骨分化実験,2)家兎膝関節の軟骨全層欠損モデルへの移植による軟骨修復実験,を行った.まずin vitroでは,導入遺伝子発現は2週間以上にわたって10%以上の細胞で認められた.軟骨分化はCDMP-1遺伝子導入細胞とコントロールのMSC細胞ともに認められ,それはゲル内培養開始後7-10日で明らかとなった.軟骨細胞への分化は免疫組織ならびにRT-PCRによるアグリカンと軟骨型コラーゲンの発現で確認されたが,約80%以上の細胞が軟骨へ分化し,その総細胞数はCDMP-1遺伝子導入群で有意に多かった.一方コントロール群でも軟骨細胞への分化は良好であったが,同時に軟骨分化せずにアポトーシスによって死滅したと見られる細胞も多数存在した.一方,家兎膝関節の軟骨修復実験では,MSC移植により術後4週目までに良好な修復が開始された.またその修復は,短期の観察ではあるがCDMP-1遺伝子導入群でより良好であった.これらの結果は,MSCからの軟骨分化が可能であることを確認するとともに,CDMP-1遺伝子導入が軟骨細胞への分化を促進させ,またその過程で分化せずに細胞がアポトーシスに陥ることを抑制していることを示している.さらにこのようなcell-gene-therapyが関節軟骨修復に有用であることを明らかにしたものである.
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